好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


「……どうして、そう思うんですか?」


まさか、浩二と礼子さんに接点があるとも思えなかった。


「う~ん。根拠は別にないんだけれど、まあ、女の勘ってやつね。強いて言うなら、亜弓は篠原さんに好意はあるけど、恋愛感情はないように見える。

だけど、恋する者の目をしている。

で、そこから導き出される答えは、本命は他にいる。ってところかな」


ズバリと。


あまりにズバリと、核心部分を的確に言い当てられて、私はただ驚きの眼差しを礼子さんに向けた。


『そんなことないです。本命は、直也だけです!』


そう言いたいのに、言葉が出てこない。


この状況で巧く嘘が付けるほど、私は器用な人間じゃなかった。


「あ、ごめん、ちょっと言い過ぎたわ。今のは失言。私の独り言だから、気にしないでね」


驚きすぎて、言葉もなく金縛り状態に陥った私に、礼子さんがフォローを入れてくれる。

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