好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
ドアの前を、気を揉みながらウロウロしていると、当の本人、浩二が部屋からひょっこり顔を覗かせた。
「ちょっ、ちょっと浩二。なんで、アンタが部屋の中に入ってるのよ!?」
伊藤君に連絡を取ろうとしないばかりか、いけしゃあしゃあと、家族だけが入れる部屋の中に入っているとは、なんて図々しいヤツ!
佐々木家の、面汚しめっ。
恥を知れ、恥をっ!
そういう気持ちを込めて、思いっきり睨み付けてやる。
しばらくの沈黙の後。
「……家族予備軍だから」と、
バツが悪そうに、
もの凄くバツが悪そうに、
ボソリと浩二は呟いた。
「はぁ?」
カゾクヨビグン?
何じゃ、そりゃあ。
学生時代、自称・文学少女だった私も、そんな単語知らないぞ?
怪しげな単語を作るんじゃない!