好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

従姉様をタバカッタ罪で、浩二の左頬にグーパンチをお見舞いしたあと、


じんじんと痛む右手を撫で撫でしながら、


『それって、ごちゃごちゃ小難しいことをしないで、そのまま私に言えばそれで用は済んだんじゃないの?』と、


私がそう言うと、浩二は涙目で左頬を押さえつつ、


「お前が、『はいそうですか。じゃあ、喜んで伊藤君にアタックします』なんて言うタマか? 意固地になって、絶対そんなことはしないっ! って言い張るだけだろう!?」と断言しくさった。


そんなことはない!


と、……きっぱり否定できない自分が、私は、少しばかり悲しい。


「それに……」


「なによ?」


まだ、何か隠しているんじゃないでしょうねっ!?


ジロリんと、睨み付けてたやったら、


「俺は、亜弓に、心から好きなヤツと幸せになって貰いたかったんだ。それは嘘じゃない……」


と、浩二はそっぽを向きながら、照れくさそうにボソボソと呟いた。


こいつめ。


泣かせることを、言うんじゃない!


と、不覚にも、少しばかり感激しちゃったことは、絶対に内緒だ。
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