好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
私が、危篤の知らせを受けたとき。
ハルカは、一時心肺停止状態に陥り、本当に危険な状態だったそうだ。
迅速で適切な処置と、ハルカ自身の『生きたい』と言う強い思いがもたらした『奇蹟みたいなもの』だったと、後から聞かされた。
あれから、三日後。
ハルカの様子はと言えば――。
「あーあ。わたしも見たかったな。あーちゃんの、彼氏さん」
ベッドに横たわるハルカは、さも残念そうに大きなため息をもらした。
さすがに、その細い腕には痛々しい点滴のチューブが繋がってはいるけど、
それでも、つい三日前の危篤状態が嘘のように元気だ。
「ふふふ。もったいないから、隠しておくのよ。無闇に見せたら、減っちゃうでしょ?」
「えー、ずるい!」
からかいモード全開の私のセリフに、ハルカは少女めいた仕草で、ぷうっと頬を膨らます。
私と直也が別れたことは、ハルカには伏せてある。
教えれば、ハルカはきっと自分のせいだと、心を痛めるだろう。
もともとあれは、浩二が独断でやったことなんだから、ハルカが気に病むようなことじゃない。
それでも。
ハルカは、きっと心を痛めてしまう。
つい三日前に、生死の境を彷徨ったばかりのハルカに、そんな心の負担を掛けたくはない。
だから、浩二にもバッチリ、口止め済みだ。