好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

私が、危篤の知らせを受けたとき。


ハルカは、一時心肺停止状態に陥り、本当に危険な状態だったそうだ。


迅速で適切な処置と、ハルカ自身の『生きたい』と言う強い思いがもたらした『奇蹟みたいなもの』だったと、後から聞かされた。


あれから、三日後。


ハルカの様子はと言えば――。


「あーあ。わたしも見たかったな。あーちゃんの、彼氏さん」


ベッドに横たわるハルカは、さも残念そうに大きなため息をもらした。


さすがに、その細い腕には痛々しい点滴のチューブが繋がってはいるけど、


それでも、つい三日前の危篤状態が嘘のように元気だ。


「ふふふ。もったいないから、隠しておくのよ。無闇に見せたら、減っちゃうでしょ?」


「えー、ずるい!」


からかいモード全開の私のセリフに、ハルカは少女めいた仕草で、ぷうっと頬を膨らます。


私と直也が別れたことは、ハルカには伏せてある。


教えれば、ハルカはきっと自分のせいだと、心を痛めるだろう。


もともとあれは、浩二が独断でやったことなんだから、ハルカが気に病むようなことじゃない。


それでも。


ハルカは、きっと心を痛めてしまう。


つい三日前に、生死の境を彷徨ったばかりのハルカに、そんな心の負担を掛けたくはない。


だから、浩二にもバッチリ、口止め済みだ。
< 179 / 223 >

この作品をシェア

pagetop