好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

対する、私はと言えば。


『スラリとしている』


なんて聞こえは良いけど、背高のっぽなだけで貧相なスタイル。


いったん寝癖が付くと、なかなか直ってくれない、頑固者のセミロングの髪。


強いて言えば丸顔に近い顔の土台に乗っているのは、父譲りの少しタレ加減で奥二重の目。


高くも低くもない、ごく普通の鼻梁。


一歩間違えば、『たらこ唇突入』の、少しぽってりした、唇。


と、まあ、自分で分析してみても、良く見積もって十人並みの容姿でしかない。


その私からすれば、礼子さんは、まるで『ビーナス様』のように思える。


正に、愛と美の女神。


その上。


仕事もバリバリこなすし、性格もさっぱりしていて嫌みがない。


やることなすこと平均ラインギリギリの私には、お手本のようなスーパーOL。


私の、密かな憧れ、理想形だ。

< 24 / 223 >

この作品をシェア

pagetop