好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

「で、なんて返事したの?」


「え、あ、うん……」


「何よ、その煮え切らない返事は。まさか篠原さんに、そんな反応見せたんじゃないでしょうね?」


礼子さんは綺麗に整えられた柳眉を、微かにしかめた。


「え、え~と、まあ、『ビックリした』的なことを言ったような……。ムニャムニャムニャ」


ううっ、鋭いなぁ。


バッチリ読まれている……。


私は引きつり笑いを浮かべて、すっかりぬるくなってしまった食後のアイス・コーヒーを、ごくごくと飲み干した。


「ねえ、亜弓?」


ジロリん。


と、長いマツゲに縁取られた、くっきり二重のアーモンド型の瞳に睨め付けられて、思わずギクリとしてしまう。


ちょっと、


顔が怖いんですが礼子さん……。


美人から睨み付けられると、迫力がありすぎて怖い。


思わずびびって、及び腰になってしまう。


「は、はい?」


「亜弓は、篠原さんのこと、好きだって言ってたわよね?」


「う、うん。言ったけど……?」

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