好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

サッカーか……。


高校の時。


ううん、中学の時からずっと。


暇さえあれば、グランドを駆け抜けていく彼の姿を、目で追っていた。


真っ直ぐ、ボールを追いかける真剣な眼差しに、小さな胸をドキドキと高鳴らせて。


ただ、遠くで見ていられるだけで、


それだけで、幸せだったあのころ。


ふと、


脳裏に浮かぶのは、忘れられない、『あの日』の光景。


まっすぐなハルカの眼差しの向こうに浮かんだ、彼のちょっと照れたような笑顔――。


忘れたはずの古傷が、胸の奥底でズキンと、微かな悲鳴を上げる。


思い出したくなくても、思い出しちゃうんだから、


こんなテレビ見なきゃいいんだけど、それでもついつい見てしまう。


何かで繋がっていたい。


『彼に』


心の何処かでそう思っている自分がいる。

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