好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
暑い夜だった。
薄闇に抱かれた田舎町の神社には、いつにない活気が満ち溢れていた。
田畑を渡ってくる湿気を含んだ夜風は、近づく秋の気配など微塵も感じさせず、
浴衣の裾をパタパタと揺らしながら、賑やかな祭りの人波を吹き抜けていく。
天空にぽっかりと浮んだ白い満月が、楽しげに行き交う人々を、優しく照らしだしている、
そんな中。
高校最後の夏休み。
さらに、その最後の日。
私、佐々木亜弓は、親友のハルカと、同い年のいとこの浩二、
そして、
浩二の友人で同じサッカー部の伊藤君の四人で、毎年恒例の夏祭りに遊びに来ていた。