好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

アイツめ!


浩二のヤツ、私に嘘をつきやがったな!


仮にも、三ヶ月年上の従姉様に、嘘を教えるなんて良い根性じゃないか。


よーし、文句を言ってやらなくちゃ!


壁掛け時計をチラリと確認すると、十時を少し回ったところ。


この時間なら、さすがにもう会社から戻っているはず。


私は、すぐさま『おじさんち』。


つまり父の弟の家である、浩二の実家に電話をかけた。


『はい、佐々木です』


「こっちも佐々木です」


都合が良いことに、浩二本人が電話に出たので、ぶすっとした声で名乗ってやった。


『んあ? なんだ、亜弓か?』


あちらさんも晩酌中だったのか、声に酔っぱらい臭が漂っている。


『珍しいな、どうした? お袋にでも、用があるのか?』


実にのんびりした声音に、なんだかムカッ腹が立ってくる。


おばちゃんに、用はない。


アンタに用があるのよっ!

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