好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「亜弓かじゃないわよ! 浩二、アンタ、私に嘘を教えたでしょ!?」


『嘘ぉ? 何じゃそりゃ。何のことを言ってんだ?』


ほうほう、おとぼけなさる。


昔、子供の頃。


一人じゃどこにも出掛けられなかった弱虫のアンタを、魚釣りやカブトムシ取りに連れて行ってあげた恩を忘れたか、


泣き虫浩二!


「伊藤君のことよ」


ドスの利いた声で言ってやったら、浩二は電話の向こうで一瞬声を詰まらせて、

『あ、ああ、なんだ、そのことか』

と、ポツリと呟いた。


『もしかして、今日のスポーツニュース、見たんだ?』


「見た。偶然だけどしっかり見たわよ、華麗なる逆転ゴール」


『……ふうん』

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