好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

直也も、ニコニコ笑顔を返す。


同じ笑顔でも、礼子さんのはとっても艶やか。


直也の笑顔は、見ているとなんだかホッとする。


「相席、いいかな?」


「どうぞどうぞ。邪魔者は消えますので、ご存分に愛を語らってくださいな」


首を傾げる直也に、礼子さんはそう言って、洗練された所作で席を立ち上がった。


「ここへどうぞ、篠原課長」


最近、課長に昇進したばかりの直也に、恭しく両手を差し出して自分の座っていた椅子を勧める。


「礼子さんってば!」


いくら社内恋愛に寛容な社風でも、さすがに社食でイチャつけるほど、神経太くありません。


礼子さんは、『じゃーねー』と、右手をヒラヒラ振りながら、社食を出ていってしまった。


「なんだか、追い出したみたいで悪かったな」


「いいのいいの。今から、デートだそうだから」


「へぇ。あの礼子女史のお相手か。少し、興味がわくな」


ほう。


真面目を絵に描いたような直也でも、そう言うのは気になるんだ。

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