好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
本は、どんな内容がいいんだろう?
ホラーとかは、もっての外よね。
あまり、ドキドキ・ハラハラするのも、いけないような気がするし。
泣ける話も、なんだかなぁ。
ラブコメみたいのが、いいのかなぁ。
う~ん……。
と、考えを巡らせていると、誰かに後ろから肩をトントンと叩かれた。
視線を上げると、珍しく直也がいた。
「あれ、直也?」
別に社員どうしの恋愛が厳禁な会社じゃないけど、
さすがに社内で会うのは、はばかられる。
だから、お昼を一緒に食べることは滅多にない。
「あら、篠原さん、珍しく社食ですか?」
礼子さんが、ニコニコと満面の笑みを、私の背後に立つ直也に向ける。