好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

こ、これは、行くべきか?


行くべきなんだろうなぁ。


プロポーズしてきた、相手のご両親が『会いたい』って言ってるんだから、プロポーズされた側としては、馳せ参じてしかるべきよね。


実家に帰るといっても、同じ県内だから、無理すればなんとか往復できるんだけど。


でも……。


迷ったのは、ほんの少し。


正直言うと、今はハルカの病状の方が心配だった。


それにもしも今直也のご両親に会っったとしても、きっとハルカのことが気になって、何か粗相をやらかすかもしれない。


直也のご両親に会うなら、万全の気持ちで臨みたい。


だから。


「ゴメンね。高校の時の友達が病気で入院したっていうから、友達どうしで誘い会わせて、お見舞いに行くことにしたんだ。私だけなら、なんとでも融通きくんだけど……」


「そうか、友達が……。それは心配だな」


嘘は、言ってない。


なのに、気の毒そうに言う直也に対してやっぱり私は、心の何処かで『後ろめたさ』を感じていた。

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