好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「……わかったわよ」
私は腹を据えて、病室のドアの前に立った。
コンコン。
すうっと一つ深呼吸をして、ドアをノックする。
「どうぞ」
すぐに返ってきたのは、聞き覚えのある懐かしい声。
ハイトーンの澄んだ声に、ドキドキと鼓動が早まる。
よし。
行け、私!
意を決して、
パステルピンクのスライドドアに手を掛けて少し力を入れると、思いの外軽やかに、音もなくドアは開いた。
「こんにちはー」
なるべく何気ない風を装いながら、明るく声を掛けつつペコリと頭を軽く下げて。
私はなんとか笑顔を作ると、病室へ一歩、足を踏み入れた。
そして。
ドキドキと暴れまくる自分の心臓の鼓動を聞きながら、視線を上げたその先に、
ハルカがいた。
まるで、時が戻ったみたいに。
あの頃とぜんぜん変わらない、ハルカが居た――。