好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
忘れられるはずが、ない。
忘れられるはずなんか、ない。
「そうだよね……」
その声に微かな震えを感じて、私はハッとハルカに視線を戻した。
その時。
コンコンと、背後でドアのノック音が上がった。
「どうぞ」
「おじゃまー」
ハルカの声に促されて、まだ開き切らないスライド・ドアからニコニコ笑顔でひょっこりと顔を出したのは、浩二だった。
「なんだ、浩……」
『どうせ顔をだすんなら、始めから一緒に来ればいいのに!』
そう言おうとした言葉が、喉の奥で凍り付いた。
そ……んな。
まさか。
「あ、伊藤君! 来てくれたんだ」
嬉しそうなハルカの声が、半分麻痺したような私の鼓膜を、通り過ぎていく。