好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「真打ち登場~」
おちゃらける浩二の後ろに佇む花束を抱えた大柄な人物が、チラリと鴨居の高さを気にしながら、ゆっくりと病室の中に入ってくる。
あの頃と同じで、健康そうな日に焼けた肌。
少し鋭さを感じさせる、意志の強そうな、黒い瞳。
その瞳と、私の視線が交錯する。
一瞬にして。
世界の全てが止まった気がした。
動くことも出来ずに息さえも止めて。
サイド・テーブルの脇で固まっている私に、少し驚いたような視線を向けた後、
彼は、柔和そうに目元を綻ばせた。
それは、久しぶりに会った同級生に対する、ごく普通の反応。
それだけのことなのに。
どうしようもなく、胸が、いっぱいになる。