好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

なんで浩二は、こんな質問をするのだろう?


今の私に、そんな質問に答えられる心の余裕なんか、これっぽっちもないのに。


「な……んで?」


自分のモノとも思えないような、掠れた声が喉から絞り出される。


「単刀直入に聞く」


「……」


「お前、伊藤のこと、好きなのと違うか?」


な!?


「なに言ってるのよ、馬鹿馬鹿しい!」


あまりに鋭いツッコミに、私は思わず声を荒げてしまった。

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