亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
上品さが見え隠れするいつもの口調は何処へやら。
感情に任せた悪態を吐きながら真っ赤な顔で憤慨するドールを、レトは面白いものを見るかの様な目でぼんやりと見詰める。

出会ったばかりの当初は、一つ上のドールの方が背が高かったのだが…育ち盛りな男児の成長は著しいもので、ここ一、二年の間にあっという間に彼女の背丈を追い越していた。
今やドールはこの十四歳の青年と話を交わす際に、わざわざ頭をもたげて見上げなければならない。恐らく、これから先もこの身長差は増していくのだろう。

目線が高くなった。…それだけだというのに、見え方が変わったように思えるのは何故だろうか。少し前までは、美少女とも見紛う可愛い弟の様に見えていたのに…。

(………大きくなっただけだっていうのに……急に…男らしく見えるだなんて…)

しかし、そんな事を本人には口が裂けても言ってやらないつもりだ。

まず女の自分よりも綺麗であるし、身長が勝ったと喜んでいるその単純さに腹が立つし。



…何よりも気に食わないのは、こんな脳天気なレト一人の言動に、いつからか一々気分が浮き沈みし始める様になってしまったおかしな自分自身だ。
常に彼の事が気に掛かり、目の届く範囲に彼がいないと心配で心配で仕方なくなってしまう。


こんな自分がとにかく……………とにかく、うざい。









いくら暴言をぶつけても、背景に蝶や花のオーラを従えるレトにはどれも何故かフワフワとした紙風船の様に受け止められてしまう。
純粋で出来ているこの男の耳には、全てが心地良い子守歌にでも聞こえているのではないか。時折、そう思わずにはいられない場面も多々ある。


…逆にドールには、そのほんわかムードが癪に障る。
足元に転がる空の植木鉢の一つを再度掴み取ると、ドールは砲丸投げの体勢に入った。
植木鉢という凶器を手に、どす黒いオーラを背後に漂わせる少女の姿は末恐ろしい。

半分は八つ当たりに近いのだが。とにかく色んな感情を込めた植木鉢は、高々と抱え上げられた。
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