空悟~大切な君~
「旅行?」
木曜日、俺は父さんに言った。ちなみに、今日の晩ご飯は空悟の好きなコロッケ。
父さんは不思議そうに俺を見ている。
「どうしたんだ?急に」
「母さんが死んでから一度も行ってないだろ?だからたまにはどっか行きたいと思って」
母さんが死んでまだ一ヶ月ほどしか経ってないけど、その間、家族でどこかに出掛けるなんてなかった。父さんは休日のたびに誘ってくれてたけど、そのたびに俺が断っていた。
母さんもおらず、空悟から目を離せなくなるなら家にいたほうがマシだと思っていたから。
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