キミを抱く
「そんなん
コドモの頃の話デショ!
なんで
さも昨日のことのように
佐藤くんに
言っちゃったのっ!?」
ん~
って可愛らしく
森くんは
小首をかしげ
「昨日のことのように
思い出せる、から?」
「ふざけんなぁ!」
思わず叫ぶと
すれ違った
上級生のお姉さんの目が
少し怖く感じられて
森くんの学ランの袖を
つまんで
声をひそめ
「どーでもいいからさ
とりま佐藤くんに
誤解といてよ」
「なんで?」
「なんでって
当たり前デショ
森くんが言ったから」
「お前ね
俺の一言だけで
簡単に
誤解する男なんて
ダメよ」
「はぁ?そんなん……」
「好きじゃないデショ?」
え?
森くんは
ポカンとした私の頬を
ペチと軽く指先で叩き
「告られて舞い上がって
オーケーしただなんて
ダメだよ、ユキちゃん」
ただ突っ立って
何も言えない私を
廊下に残して
森くんはサッサと
教室に戻っていった
去り際
一言だけ
森くんは呟いた
「タカシって
昔は生意気に
呼んでたのにね」って