The Nightmare Eraser 悪夢を消すもの
 夢の恐怖を振り払えず心臓がドキドキしている一方、意識は急速に覚醒して状況を把握していく。
 薬剤師の草薙建。付き合い始めて半年。今日は彼の部屋のソファで一緒に映画のDVDを見ていた……ハズなのだが、途中で彼にもたれて眠ってしまった様だ。

 あぁ……もう私、最低だ……!

 まだ心臓がドキドキしていて、頭の中はグルグルして、なんだかクラクラする。

「わぁぁごめんなさい! 最近ちょっと残業が続いてて……。だから、疲れて、寝ちゃったの、かも……?」

 両手をバタバタさせながら必死で話す美耶の様子が可愛くて建は、笑いながら美耶の頭をなでた。

「っ……はは! そんな必死にならなくても」

 低く響く声に美耶は、不意に涙がこぼれた。
 少しずつ、張りつめていた気持ちがほぐれて、ドキドキが治まっていく。

「そんなに怖い夢だったの?」

「うん……起こしてくれて、ありがと」

 流れ始めた美耶の涙は、堰(せき)を切ったように止まらない。

「あぁもう、そんなに泣かなくても……。怖かったんだね。よしよし」

 建は苦笑いを浮かべ、赤ん坊にする様に美耶を前から抱(かか)えて、背中をポンポンとたたく。

「泣いてないもん……。なんで、そんな子供扱いなの」

 少しずつ落ち着いてくると、今度は急に恥ずかしくなってきた美耶は、止まらない涙を指で拭(ぬぐ)いながら拗(す)ねてみせた。



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