白い吐息

「前にも、報告したよね。好きな人が出来たって」

墓に向かい、話し掛ける真人。

「今日は、その人と出掛ける予定だったんだ。アイドルのライヴだけど…」

勿論、返事は返ってこない。

「でも…喧嘩しちゃった」

真人は携帯を見つめた。

「彼女はオレのこと心配してくれてたのに、オレ…酷いこと言ったんだ」

最低だな…

「あなた以外で初めて心が開けそうな気がしたのに、まだ何も言えてない」

親にも、戸部にも言えていない事故の真相…

「5年間…何してきたんだろう」

5年前、新聞にはこう取り上げられた。
[白居グループ会長の息子、教育熱心な親に追い込まれ自殺未遂]
でも、本当の理由は他にあった。
しかし、真人の父親はそれを隠して逃げることしか出来なかった。

「逃げるのは、父親譲りかな?」

でも、あなたは逃げるような人じゃなかったよね

「逃げてちゃ、ダメだよね」

立ち上がる真人。
携帯の切断機能をオフにする。
そしてメールを打ちはじめた。

《会場で、待っています》

送信。

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