白い吐息

「別に誤解とか…そういうのは違うでしょ…」

琴は真人に背を向けた。

困ってるはずなのに顔が何故か赤くなる。
彼女はそれを必死で隠そうとしていたのだった。

「外国語研究部って何するの?」

急に話題を変える真人に。

「決まってない…」

残念そうに琴は呟いた。

「何?」

「何も決まってないのよ。活動したことないんだから」

少しふてくされた表情で、勢いよく振り返る琴。

「そっか…」

「そうよ」

「じゃあ…」

「じゃあ?」

「考えないとね。オレと先生が2人で出来ること」

真人は長い足を軽く伸ばして器用に机の上に座り直した。

「机に座らないで!」

吐き捨てるような大きな声で琴は真人を叱った。

「なんでそんなにカリカリしてるの?」

机から飛び降りて、真人は琴の顔を覗き込んだ。

「冗談とかやめて…」

耳をふさぐ琴。

「先生?」

「私の中に入ってこないで…」

「先生…」

泣き崩れた琴にそっと話し掛ける真人。



乱される。

傷口が悲鳴をあげる。




「白居くん…」


「えっ?」


「今日は…帰って…」



真人はゆっくり琴の側を離れ、そして生物室を無言で後にした。


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