白い吐息
「それで先生、怒ってるの?」

「おっ…怒ってないわよ!」

冷静さを取り戻そうと真っ赤になった顔を片手で隠す琴。
しかし声が裏返ってしまう。

「やきもち?」

「そんな訳ないでしょ!」

真人は教室にいるときのように机の上で胡坐をかいた。
琴はでっかい教卓を前にうろうろしている。

「あれはさ、先生に見られたくなかったの」

「なっ…何を?」

「女に囲まれてる所?オレ、クラスの人気者だから」

琴の目が点になった。

「最近の女って、やたら身体触ってくんだもん」

絶句する琴。

「そんなの見られたくないじゃん」

そう言って、真人はまた笑顔に戻る。 

もはや琴は返す言葉が見つからず、深々とため息をついた。

「どーしたの?」

「なんか…そういうこと自分で言えるってスゴいね」

琴は目をつぶったまま頭をかいた。

「だって、先生の誤解ときたいからさ」
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