白い吐息

「真人…先生のお家では迷惑になっていないの?」

「歓迎されてるよ」

2人の声が響く広い白居家のリビング。

「そう…」

少し残念そうな顔をする真人の母。

「正月には帰ってくるよ」

「じゃあ、一緒にお正月は迎えられるのね」

「うん」

優しく微笑む真人。

「…ごめんね。全部私が悪いのに…」

「だから、もう謝らないで。終わった話だよ」

「でも…お父さんは…」

母はわずかに涙をこぼす。

「一番辛いのは母さんだろ?」

「真人…」

「皆人は何も知らないんだから、こんな風にオレに接したらダメだよ」

「そうね……」

「じゃあ、行くね」

母の手をのけて、立ち上がる真人。

「うん。お正月楽しみにしてるわ」

「……母さん」

「何?」

「オレ、今幸せだよ」

そう言って真人はリビングを立ち去った。
真人を見送ろうと立ち上がった母だったが、その言葉を聞いて足を止めた。
そして安堵した様子でまたソファーに腰掛けた。




「もしもし、関口先生?私です」

携帯を握り歩く琴。

「今日、具合が悪いので申し訳ありませんが欠席させてもらいます」

立ち止まる琴。

「…はい。いえ、よろしくお願いします」

電話を切って、携帯画面から目を離す。

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