白い吐息
「まだ時間ありますよね。保健室行きません?」
田口先生がまさかの誘い。
「…ぁあ…でも、今日は関口先生は午前中、居ないんですよ」
「だから若い2人で話しません?」
ニコニコ笑顔の田口先生。
琴の顔の前に保健室の鍵をちらつかせた。
「…少し…なら」
断る理由が見つからず、琴は田口先生と共に昨日大泣きした保健室へとやってきた。
考えてみれば、この保健室も和みの場所から思い出が目につく居づらい場所へと変わってしまった。
「長谷川先生は彼氏とラブラブなんですよね」
「…いや、それが…その、最近別れちゃって」
「え!?そうなんですか、どうして…?」
それは琴本人が一番聞きたいことだ。
「色々あって…」
それしか言えない。
「ごめんなさい。知らなかったから、私一人ではしゃいじゃって」
「いえいえ。そんな、気にしないで下さい」
「…でも」
「私は平気ですから」
嘘つき…
平気なわけない…
せめて相手が生徒だったら気持ちも違ったのに…
「白居くん、今月末が誕生日なんです」
そんなの、知ってるよ…
「そうなんですか」
琴はしらじらしい自分が嫌になりそうだった。