白い吐息

「でね、誕生日って何をプレゼントすればいいんですかね?」

「…?」

「そんな顔しないで下さい。こう見えて、男性とお付き合いした数が少ないんです…しかも今回は年下だし」

「はぁ…」

何だか拍子抜けをする琴。

「手作りケーキとか考えたんですけど、私料理は苦手だし」

「アクセサリーとかはどうですか?」

琴は適当に答える。

「そっか…!そうですよね」

ひとり盛り上がる田口先生。

「安物でいいんですよ。下手にブランドとかだと好みもあるし、重いし…」

以外にも的確にアドバイスする琴だった。
早く話を終わらせたかったのだ。

「何がいいですかね?指輪はサイズ聞いてないし…ネックレス?…あ、ピアスがいいかな!」



ピアス…


「白居くんシルバーの羽根の形のピアスしてたから、シルバーで違う形も似合うかも」



羽根の…

ピアス……






秘密のピアス…


私のあげたピアス…



あのピアスは




キスしないと見えないのに……



「どう思います?」

「……」

「長谷川先生?」

枯れていた泉からわきだした涙は、あっという間に琴の瞳から流れ落ちる。
琴はうつむくことしか出来なかった。

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