白い吐息
「私も…ずっと…先生が大好きだったの」
真人の身体に抱き締められながらも、琴は真人の温もりを思い出すことはなかった。
先生…
「連れてって…」
何度もキスをして、やがて2人の姿は科学室から消えた。
「先生!長谷川先生は?!」
昼休みになり、戸部が保健室に飛び込んできた。
関口先生は首を横に振る。
「実家、電話したの?」
「したんだけどね、留守みたいで繋がらないのよ。長谷川先生の携帯も全く繋がらないし」
関口先生は頭を抱えてイスに座る。
「…警察…は?」
戸部も腰掛けた。
「大事にはしたくないのよ。彼女、教師としてスゴく努力してきたし…」
「警察ざたになったら水の泡ってことですか?」
「うん…。心配は心配なんだけど」
いつも明るい関口先生が軽く青ざめながら、深刻な顔を作っていた。
「大丈夫ですか?」
戸部が優しく関口先生の肩を叩いた。
「優しいわね、あなた。あなたに白居くんが心を開いた理由が分かったわ」
「…そんな、オレなんか何の役にも立たないし」
戸部は唇を噛む。
「存在だけで充分役に立ってるわよ」
関口先生が逆に戸部の肩を叩いた。