白い吐息
息子という言葉に琴はやっとこの女性が真人の母親であることを理解した。
戸部から聞いたスパルタな印象は全く感じられなかった。
むしろ清楚で穏やかな印象である。

「その話を聞いて、学校側は何も詮索してこなかったってことですか?」

「…最初の頃は、学校の中を探してみますとか、何か分かったら連絡しますと言って下さることもありました。でも最近は、真人の無断欠席が当たり前のように受け入れられてしまって、…私も情けないほど何も知らなくて…ただ心配するだけで」

「真人さん…そんなに無断欠席してるんですか?」

琴は失礼を承知で聞いてみた。

「最近は少なくなった方なんです。中学生のときは頻繁で…」

「どこに居るとか、心当たりはないんですか?」

「携帯に電話すると、素直に出てくれるんです。居場所は教えてくれませんが、心配はいらないと…ちゃんと帰ると…」

「それを信用することにしたんですね?」

「ええ…」

母親は淋しそうに頷いた。
琴は自殺未遂について触れようとしたが、そんな母親の表情を見ていると、とても口に出来なかった。
ただひとつだけ琴は聞きたいことがあった。

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