白い吐息
「真人さんは、ちゃんと家に戻ってこられるんですね?」
「はい。だから何も聞かないと心に決めたんです」
と言い、真人の母は目頭を押さえた。
一体、彼はどこに行ってるんだろう?
同じ場所とは限らないか?
無断欠席する理由は?
自殺未遂は単なる英才教育が原因なの?
白居家から自宅に戻るまで、琴はずっと真人のことを考えていた。
戸部から聞いたことが全て事実かは分からない。
でも、琴は信じたかった。
真人が自分に好意を抱いていることを。
「なんで?」
呟く自問。
そんな時、カバンの中で携帯がバイブしていることに気付いた。
立ち止まり、慌ててカバンの中を探る琴。
性格上、いつも沢山のものを持ち歩くのでカバンの中が荷物でごったがえしている。
「あった!」
ピンクに点滅するソレを取り出した。
携帯の背面には着信マーク。
「電話?」
琴は急いで携帯を開いた。
知らない番号。
090から始まるから携帯番号だ。
琴はためらったが、あまりに長い間呼び続けるので通話ボタンを押してみた。
「…もしもし」
恐る恐る喋る。
「「先生!?」」
聞き覚えのある声だった。