白い吐息

「そっ…それは…そうだけど…」

琴も頬を赤らめる。



「もし、1年後に2人の気持ちが変わってなかったら…本当に大切な人だって納得したら…結婚してほしいんだ」

真人の瞳は真剣そのものだった。


「真人…」



「真人さんの願いだったんだ。琴子の名前を白居琴にすること」


白居先生の…?


「オレが、その願い引き継いだ!」


「……」


「オレは…真人さんに負けないくらい…琴を愛してるから」


琴…



「琴が帰ってくるの待ってるから」



琴…




そう

私だ…




「待ってる」

真人は歯を食い縛った。





初めて真人に呼ばれた気がした…


白居先生じゃない
真人という人に…




愛する人に……



「じゃあ、今度は恋約じゃなくて婚約だね」

琴が笑う。



「…そーだね」

真人も笑う。



寒い夜空に2人の白い息が舞い上がった。



2人が生きている限り消えることのない吐息。


生きている一番の証明になる吐息。



寒い季節には真っ白な綿のようになる吐息。




「あっ…雪だ」


「ホントだ」





見えていますか?
白居先生…


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