白い吐息
華奢な琴の身体は真人の胸にすっぽりしまい込まれて身動きが取れない。
「しっ…くる…っ」
小刻みに息を吸うと真人の匂いが琴の体内に流れこんでくる。
ダメ!―
「しら…っっつ!」
琴が自分の胸を押し返しているのに気付き、真人は腕をほどいた。
息を切らし机にもたれかかる琴。
真人の顔は真っ赤に染まっていた。
「…ごめん…先生」
「……なんか…今日は…謝ってばかりの日ね」
少し乱れた着衣を直し椅子に座る琴。
「Sorry…」
真人は床に座り呟いた。
「しっ白居くんて…以外と背が高いよね」
琴は無理に話題を変えようとした。
「へっ?」
「何センチ?」
「180ジャスト…」
「ふ〜ん」
「先生?」
「……」
琴は頭を抱えていた。
「先生…?」
返事がないのが気になって、真人は立ち上がり琴を確認する。
「ホント…ごめんなさい」
真人は頭を下げた。
琴は動かない。
「オレ、教師と生徒が…その…恋しちゃいけないみたいに言われて、…だからカッとなった…」
そう弁解しながら、真人は琴の座っている前の席に横を向いて座った。
「で…?」
琴はうつむいたまま真人に問う。
「…でも、そんなのが理由じゃないんだよね?」
琴が少しだけ顔を上げると、真人の横顔が淋しそうに夕日に照らされていた。
「先生は、まだ…その人が好きなんだね」
真人の目はどこか果てしなく遠くを見ているようだった。