【短篇】私と僕。~逆らっちゃダメ~
その手は、頬に触れた。

「…ハナ…?」


「私も…好き。ユウマ。」


ユウマ―…。


10年ぶりに呼んだ、『ケンちゃん』の本当の名前。


「今、気付いた。私、鈍感だったみたい。私は、『ケンちゃんの御主人様』じゃなくて、ユウマの彼女になりたい。」


私が、変わった瞬間。


御主人様じゃなくて、女の子になる。


「…俺も、ハナの彼氏になりたいッ。」


二人で見合って笑った。

10年続いた『御主人様とペット』の関係は新しい関係へとなった。


『彼氏と彼女』


二人の新しい関係。


私は、ユウマにやっと追いつけた気がする。


ホントウのユウマは、ずっと私を見てくれていたんだね。


「帰ろうか。」

何も言わずかばんを二つ、ユウマは持ってくれた。


「うん。」


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