飛べない鳥
『何度も心中させられたような記憶がある。
前に住んでたマンションは7階だったからね。
私は最後にそこから飛ぶのを拒んだ。
なんかいけない事だって、やっとわかったのかな?
急に恐怖が湧いてきたの。
だけど母親は私を置いて
飛んだんだ。』
“飛べない鳥”
彼女が自己紹介に言ったあの言葉がやっとわかった。
『案の定、母親は落ちて死んだ』
『その姿を見たの?』
『ううん。夜、騒がしいと思って起きたら
家の中にはたくさんの警察がいて
隣にいた母親の姿はなかった』
『…それで、なんで飛鳥が人殺しなの?』
そう聞くと、飛鳥は力なく笑った。
『私は精神的に母親を追い詰めたんだよ』