幸福論

悲喜


一時間遅れで着いた学校への足取りは自然と重い。

授業途中の教室に入る勇気の無い私は、初めて保健室のドアのノックした。






コンコンッ…






「失礼します…」






「どうした?」






「あ…の、え…と。」






なんて言えばいいんだろう…。

考えなしに入った保健室で、保健医が椅子に座ったまま私を振り返った。






「えっと、ここに学年クラス名前書いて。

次のチャイム鳴るまで、ココに居たらいいよ。」





「ありがとうございます…」





ペコリと頭を下げた私に先生が、「君、アクセント違うね?俺と一緒だね?」ニコリと笑った顔が穏やかで、少しお兄ちゃんに似た雰囲気に、緊張が解れた。






「先生も、こっちの人じゃないんですか?」






保健室使用者名簿に名前を書きながら私は自然と言葉が出た。






「横浜。

採用試験がたまたま通ったのがこの県だった(笑)。」






「そうなんですか。

あたしは、東京です。

おばあちゃんと一緒に暮らすために、家族でこっち来たんです。」






「そうか。

慣れねぇよな、環境も全然違うもんな、あっちと、こっちじゃ。

ゆっくりしてけばいいよ。

同郷のよしみっつう奴だな(笑)。」







「同郷?」






「そ。

似たようなもんじゃね?

東京と、横浜なんてさ。」



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