幸福論

ゴツイ目のスカルが付いたシルバーのキーフォルダーを幸谷君に投げた晃司さんが、「こけんなよ。」と、笑った。





「安全運転しかせぇへんし。」






「だぁな?」






「あ、水着に着替えてもええ?

部屋貸してよ。」






「ああ、勝手に使ったらええわ。」






ガラガラガラ…

お店のドアが開く音と、楽しげな人の話し声が店内に響いた。






「いらっしゃい」






お店にお客さんが入って来たので、晃司さんは、カウンターの中へ入ってしまった。







「愛子、こっち来て?」






私の肘を掴んだ幸谷君が、お店の奥のドアを開けた。

薄暗い上り口に靴を脱いで、私は腕を引かれたまま、部屋の中へと入った。






「お前、ここで、着替えたらええわ。

俺、兄ちゃんの部屋に着替え置いてんのよ。

そこで着替えて来るわ。」





唖然としたままの私を残して幸谷君はリビングらしいこの部屋を出て行った。






「着替えろって…言われても…」





雑然とした部屋を見渡して私は溜息を落とした。





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