幸福論
「…変だよね…。

着替えるね…」





ちょっと意気消沈…。






「ん、着替えて?」





抑揚の無い幸谷君の声に少しだけ泣きそうになる。

でも、仕方ない。

似合わないよね…、こんな水着。






「…ッ…、着替える…ッから、出て行ってくれる?」





ああ、泣いちゃいそう。

幸谷君に“似合わない”なんて思われたことが、恥ずかしいのとショックなのが重なって、目の奥がジンワリ痛い。






俯いた私の前に幸谷君が来たのがわかった。

白地にグリーンの模様のダボッとした水着と、細い足首にあるビーズのアンクレットが見えた。

お洒落だな…。

私なんかと全然違う…。

そう言えばサーフィンするとか言ってたよね。







「…なんで泣くん?

そんな水着着たかったんか?」





優しいけど少し戸惑った幸谷君の声にどうしようもない気持ちが込み上げてきた。
< 87 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop