ALTERNATIVE Ver.0.5
ズボンとパンツをいっぺんにおろして真っ白い便座に腰を下ろすやいなやニュルニュルと細いうんこが垂れて途中で止まった。

なぜ?止まったのか。

目視したわけではないが、このうんこはとても黒い。

すべての色を混ぜると黒くなると言うが、それにしても黒いものを食べなくてここまで黒くなるのかと。

いや、そんなことはどうでもよくて、眼の前には安そうな皺の目立つ黒いスーツを着た女がいた。


そのスーツは、ひと昔前の形だ。



女は男の顔を覗き込み笑った。

ややタレた目と少しポッテリとした唇が印象的な男好きするような顔だ。

「あのぅ」と声を出そうとしたが擦れた。無理もない。男は一週間ばかり誰とも口を利いていないので、声がうまく出なかったのだ。

それと同時に入る前に見た入口の張り紙を思い出していた。

その間中、うんこは進むとも戻るともせずに、しばらくブラブラしていた。

うまく思い出せないがトイレ女募集という文字、それとセクシーを意味するような女性のイラスト。

男は、トイレの中を見渡した。


座っている場所から壁やドアが遠い。


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