冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
助けなし、

望みなし、

携帯は落として来たまま、


もう、呆然とするしかなかった。



コンコン

不意に、バスルームの扉がノックされた。

「タオルと、お着替えをお持ちしました。入室してもよろしいですか?」

女性の声がして、

あ!はい、と私が答えると、滑り込む様にバスルームに一人の女性が入って来た。


ドア!! と思い銀色のドアノブに手をかけたが、すでに鍵がかけられていた。


な、なんて、素早いヤツっ…


「無駄ですよ。紘夜様には敵いません」

バスルームに入って来た女性がそう話す。


女性は20前後、私より少し上にみえる。

栗色の長い髪を、後ろでまとめ、
黒いメイド服がとても似合う綺麗な人だった。


< 15 / 413 >

この作品をシェア

pagetop