冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
抵抗虚しく、男は軽々と私を抱き上げ、
まるで荷物を運ぶように私を肩に担いだ。
そして、大きな屋敷の扉を乱暴に開けると、
「静音(シズネ)!! 帰った。それと客だ」
屋敷に響く声で叫ぶ。
男は私を抱えたまま、構わずどんどん階段をのぼっていく。
そして、数ある部屋の中の一つのドアを足で蹴る様に開けると、その部屋の中にあるバスルームに私を放り込んだ。
「やだっ…、やめて!!」
やっと出た私の声は、男の表情一つ変える事は出来ず、
バンッ
と、バスルームの外から、男に鍵をかけられてしまった。
「開けてっ!! 家に帰して!!」
バスルームの白いドアを叩きながら、私は叫んだ。
「風呂あがったら開けてやるよ」
平然とした男の声が、ドア越しに聞こえる。
「大声出しても無駄だ。この屋敷はオレの家だ。助けはないぞ」
そう男の声がして、
ガックリと、
私はその場に座り込んでしまった。