冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「って、なに、静音に隠れながら叫んでんだよ?」

うっ……
だって…


「俺は腹へってんだ、さっさと飯にするぞ」

「紘夜様、またそのような事を。実織様を、お食事の場までエスコートして差し上げて下さい」


ひーー!
静音さんっ、なんて事を!!


部屋を出て行こうとしたあの男は、静音さんの言葉に、はあー、とため息。
そして、私の方に向かって歩いて来た。

「い、嫌々あんたに連れて行ってもらわなくてもいいわよっ」

「紘夜」

「え?」


なに?
紘、夜…?



「あんたじゃなくて、俺は紘夜だ。実織」


そう言って、私に手を差し伸べた。


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