Au Revoir―再会―


そんなこんなで、あたしは入庫したばかりの愛車を、たった今、出庫させようとしている。


『料金は600円です』


甲高い機械音に、軽く溜息を漏らす。


自動精算機に手を伸ばし、小銭を入れたあたしは、助手席に座る謙にチラッと目を遣りながらゆっくりと車を発進させた。


一方通行の道路を左折しようとしたときだった。


「車、替えたんだ?」


「あっ、うん。こっちに来てから新車に買い替えたんだ」


前に乗っていた車に、謙を一度だけ乗せたことがある。

免許を取ったばかりの頃だった。


『絶対、事故んなよ!まだ死にたくないからな』と後部座席からプレッシャーをかけられながら、あたしは運転した。


もちろん、謙の隣にはお姉ちゃんがいた。


小回りが効いて、街乗りに最適な赤い車は、あたしのお気に入りだった。


でも、あの車にはもう乗りたくなかった。


あの街から離れたように。

車も新しく買い替えた。

何もかもが、一からのスタートだった。



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