もしも僕らが、、、

その後、小野寺さんはあたしに向かって「荷物の整理をちゃんとする事!朝7時からのラジオ体操には必ず出席する事!お菓子禁止!」と言ってすぐに出て行ってしまった。
後から如月さんが自分は副寮長だという事を教えてくれて、それで2人できたのか、と1人納得していた。

さて、寮長さんに言われた通り、整理しなきゃいけないけれど。
あたしはどうしても段ボールを開ける気になれなくて、時間がどんどん過ぎていく。
どうしようか…と悩んだ挙句、開けなければいいという考えになった。
元からこの部屋には机やベッドがあるし、特に何もなくったっていいじゃないか、と。
どうせここにある荷物は家が買収されたため、しょうがなく持ってきた荷物だから。
そう考えると、何故か悲しくなったけど、泣かなかった。

中学一年生のあたしには、いろんな事がいっぺんに、しかも急速に起こったために、気持ちの整理がついてなかったんだと思う。
だから、本当に何の音もしない自分の部屋が怖かった。

正直、2人が部屋に来てくれてほっとした。
だけど、今はあたし一人だけ。
物凄く孤独を感じるし、誰も味方はいないって思った。
両親だって、あたしを置いてどこかへ行ってしまったし。
あのピアノの音は何だったかもわからない。

―何もかもわからなくて、あたしはどうしたらいいのかわからない。
この学校でうまくやっていけるかも、わからない。
自分の中の恐怖が渦巻いて、あたしは何とも言えない気持ちを実感する。

悔しい、悲しい、苦しい、辛い、痛い、わからない…あたしを取り巻く感情達が悲鳴を上げていた。

どうしても消えてくれない不安に、あたしはとうとう疲れて寝てしまった。





夢の中で、あたしは家族との幸せな時間を過ごしていた。
自然と涙が出てきた。
あぁ、どうして。どこへ消えたの?
あたしの家族と幸せと、未来への希望を返してよ。
ねえ、お願い。

『あたし、精一杯生きるから―……』

< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop