ビター・ビター・チョコレート
「楽器に当たるなんて、最低ね。ホント、ガキなんだから」



「ええ。俺は、どうしようもないくらい子供なんです」




艶子の息が首筋に当たる。





「なんて脆い子。芸術の才能がある人間って、みんなそうなのよ。子供のまま体だけが育っちゃって」



「止めて下さい……」


と、椅子から立ち上がった。



艶子が後ろから抱き付いている。




「嫌な事があったんでしょう?音を聞けば分かるわ」




艶子は、初めての女性。




あの時も――、母親が死んだ時も、こうやって……耳元で囁いて俺の背中に体を押し付けた。






「私は、君が好きだよ」




俺は……彼女のピアノは好きだ。




でも、彼女自身を見たことは無い。



それでもセックスはできる。



俺は、そんな最低な男なんだ。



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