僕とあの子の放課後勝負

あんなに僕が楽しみにしていた買い物は、正直、あまり良い気分がするものではなかった。

雨月さんは僕を見て――いや、僕が持っていた画材を見て、「菅谷君、それ、使いやすい?」と問うてきた。それと言うのは、僕が長年愛用している水彩色鉛筆のことだ。「まぁまぁ馴染むし、使いやすいよ。あれよりは」と僕が置いてある画材を指すと、雨月さんは少し微笑んで「ありがとう」と言った。
既に「僕<画材」の公式が出来ている、と思った。三ヶ月前、これが恋だと気づいたあの日からずっと、雨月さんには少し積極的に話し掛けるようになった。でも彼女は気づかない。全く。少しも。
僕は心に靄がかかったような気持ちになるのを、押さえられなかった。ずっと、晴れない。雨月さんと話すのは楽しいし、やっぱり好きなんだなと改めて思うけれど、すっきりしない。雨月さんよ早く気づけ、僕の心の内側に。

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