僕とあの子の放課後勝負

結局、放課後勝負第一回戦は僕のボロ負けだった。彼女には勝負をしているつもりもないし、僕の勝手な思い付きだけど、告白をする勇気が僕には無い。ヘタレ、と言うのが一番正しい表現の仕方だろう。
家に着いたのはいつもより少し遅かった。部活を休んで行ったから、明日はちゃんと出よう。

「ただいま」

「おかえり」と最初に言ってくれたのは、一人暮らしを始めたばかりの兄、圭だった。

「圭兄、いつ帰ったんだよ。一人暮らしは」
「それが、母さんの飯が食べたくて帰ってきたんだ。やっぱり駄目だなぁ。俺、一人暮らし出来る性格じゃない」
「何だよそれ。あ、そうだ圭兄。梨央が作ったケーキ、まだ冷蔵庫にあるけど」
「り、梨央が?…いや、遠慮しとくよ」

苦笑いする兄の顔は、少しばかり引き攣っていた。

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