僕とあの子の放課後勝負
家に帰ると、妹しか居なかった。
「ただいま」
「……」
「…?ただいま」
「……」
どうやら音楽を聞いているらしく、イヤホンからはクラシックが聞こえてくる。
僕は妹の耳からイヤホンを外して、耳元で思い切り叫んだ。
「た、だ、い、ま!」
「ったぁ!何するのよ馬鹿!」
「梨央がいけないんだろ」
効果、抜群。
明らかに不機嫌な妹の横を通り過ぎ、冷蔵庫のあるキッチンへ向かう。
「それより、何聞いてたんだよ」
「吹奏楽部でやる曲!お兄ちゃん、コンクール見に来るんでしょ?」
「あぁ、日曜だっけ…それが、京平に映画に誘われてさ」
「何で、見に来るって言ったじゃない!」
妹の顔がみるみる歪む。あぁ、やってしまった。