ふたりごと


それからの私は、ゆっくり時間をかけて、土日や祝日など休みの日を利用して和仁との思い出のものを部屋中から集めた。


彼に誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントでもらったものや、二人で撮った写真、記念日のたびに私に書いてくれた手紙など、集めるととてもたくさんあった。


彼が愛用していたお弁当箱も、灰皿も、クローゼットに置き忘れていったマフラーも。


すべてひと通り目を通した。


旅行や何気ない日常を撮りためた写真を綴ったアルバムは何冊もあった。


さすがにこれだけは目を通すのを躊躇したけれど、それでも時間をかけてすべて目を通す。


5年前の私が和仁と顔を寄せ合ってお互い照れたように写っている写真が最初だった。


「懐かしいな……」


大学時代、就職活動のため二人ともリクルートスーツを着たまま食事に出かけ、記念日を過ごしたこともあったっけ。


初めて遠出して県外の温泉へ行った時、和仁は食べ物の好き嫌いが多くて、旅館のご飯をほとんど食べられないこともあったな。


甘いものが嫌いだから、彼の誕生日は必ずフルーツタルトだった。
フルーツだけ食べて、下のタルトは私が食べるのがいつものパターン。


社会人になってから、夏休みを利用してグアムに旅行に行ったこともあった。
せっかくグアムに行ったのに、和仁はチップをどう渡せばいいかわからないと食事はほとんどテイクアウトし、ホテルで食べた。


彼は明るくてムードメーカーで人を笑わせることが好きな人だったけれど、意外と繊細で、会社でミスした時はとことん落ち込んだりもした。
言いたいことをその場で言わず、あとからまとめて言ってきたり。
そして、こうと決めたら動かない頑固なところもあった。


いつも合わせてついていくのは私だった。


ふと、アルバムを見ていた手を止める。


そしてデジタルカメラを取り出して、写真の履歴を確認した。


登山した時に頂上で撮った松崎くんとの写真。


写真の中で微笑む彼を見ながら、この人は本当に和仁と正反対な人だと思った。


性格だけじゃない。
食べ物の好みとか、仕草とか。


系統がまるで違うと言った方が正しいかもしれない。


< 155 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop