年下の悪魔
そうだったんだ。

全然知らなかった。

海の近くで産まれたんだ、涼君って。


「ほら、ゆい。蟹。すっげぇちっちぇだろ!」

にっこり笑いながら手の平に乗せた小さな蟹を見せて来た。

可愛いけど、生きた蟹なんて見るの初めてかも。

あ、昔行った魚介類系の御飯屋さんの大きい水槽で見た事あるけど…

「何か…蜘蛛みたいで怖い」

「おいっ!てか、お前も登って来いよ!景色もいいし」

「やだよ!怖いもん!」

「大丈夫だって!ほら」

涼君が手を差し出してくれた。


さっきまで子供みたいな顔してたのに、何でだろう


ちょっとだけ、頼もしいかも。


急に男みたいな顔になった涼君に戸惑いつつも

その手を取ってしまった。





「浮輪、海に浮かべたままだけど大丈夫かな?」

「人も少ないんだから大丈夫だよ。足場、でこぼこしてっから気をつけろよ」

うわ、本当にでこぼこだ。

っていうか、下から見た時はそんなに高く感じないのに、実際登ったら結構高く感じる。

「これ、落ちたらヤバいよね?」

「下は海だから大丈夫。死なねーよ」


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