年下の悪魔
泡沫

風邪をひいた頭で考え事なんかするもんじゃない。
車のちょっとした振動でも頭がガンガンする。
最初は寝転びながら流れる木々の景色を見てたけど、高速に入った瞬間、車内の天井だけを見る事にした。

絶対さっきより熱上がってる。

頭は痛いし喉は痛いし。

涼君が何か話かけて来てたけど元彼の事ばかりだ。

聞こえてはいるけど理解出来ない。

「ゆいさん、聞いてます?」

「……ん」

シカトなんかしたら後が怖い。

でも今は力が出ない。

恐怖より怠さの方が勝っていた。




高速を下り一般道を走り、そろそろいつもの自販機に着きそうだな。

起き上がらないと。

でも気持ち悪くて起き上がれない。

歩いて帰ろうにも寒くて動けるかわからない。

背中がゾクゾクする。

車が減速し停止した。

着いたのかな?起きなきゃと思っていると

何やらガサガサと気配を感じる。

ゆっくり目を開けると

「ちょっと、涼君!」

「初めてキスした空き地です。ここも人気少ないですもんね。大声出しても誰も来ませんよ」



私の体にまたがったまま意味深な台詞を吐き捨てた。

こいつ…

ダメだ、力が出ない。

大声出そうにも声が出ない。

意識が朦朧として判断力も落ちてる。

今からまたされるのかな?

どうでもいいや。


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